ソルトのために

ソルトの面白さについて

ソルト的な世界は、いったい何に特徴があるのだろうか。この映画には、男性にとって受け入れ難いところがまずもって目に付くだろう。かつて、車と女と銃があれば、映画が撮れると語った監督がいたが、このソルトという映画は、車も女も銃もあるのに、映画が映画に相応しくない装いをしているのだ。
サスペンスに次ぐサスペンス。アンジェリーナ的な世界のいかがわしさと痛みは、女もの顔を易々と
傷だらけにしてしまうところにあるだろう。まるで、それは、途方もないレイプの被害者か、DVの被害者のそれを思わせる。彼女には最愛の夫がおり、その夫と結ばれたのが、彼女が痛ましい暴力を受けた後だったことを思い起こすと良いだろう。

すべてを受け入れると語った蜘蛛学者の夫のように、彼女の映画はを見るものはすべてを受け入れるしかない。そして、彼女と死ぬまで寄り添うことを選ぶしかない状態におかれるのだ。
賞賛し、愛でる対象である女性をどうしてここまで痛めつけることができるのか。どうして、ほんの安らぎの場所すら彼女から奪われてしまったのだろうか。この映画はには、そうした謎がいくつも潜んでいる。